2008年4月 ~出会い~

4月12日(土)・13日(日)に県内各地からかごしま子どもミュージカル「この花咲くや姫」の出演希望者が約120名集まり、東京のミュージカルカンパニーイッツフォーリーズを指導者に迎え、ドキドキの初顔合わせとなりました。昨年の「子どもミュージカル講座」の仲間との嬉しい再会や、新しい仲間との出会いで、子どもたちは嬉しそう。ダンスや歌などのオリエンテーションでは、元気な声が宝山ホールに響きわたりました。これから、12月の公演にむけて力をあわせてがんばります。応援よろしくお願いします。

このコーナーでは平成20年12月27日(土)の鹿児島の小中学生が主役のオリジナルミュージカル「この花咲くや姫」の上演にむけて、出演者やミュージカルに携わる人たちをリポートしていきます。お楽しみに!

2008年5月 ~思い~

『毎回参加するたびに「ミュージカルっていいなぁ」と思います。将来の夢もミュージカル女優になりたいと思わせてくれました。歌は下手だけどこれからもがんばります。(中1年Sさん)』

『わたしはやる気まんまんです。わたしは、ダンス、歌、サッカー、理科もすきです。1ばんすきなのは「元気なあいさつ」です。ミュージカルは楽しいので、自分がおどって、おきゃくさんがわらってくれたり、おもしろいなといってくれたらうれしいです。おきゃくさんもみていたら、たのしいと思います』今日(4月12日)の練習が死ぬほどおもしろかったです。(小3年Nさん)』

出演する子どもたちのミュージカル『この花咲くや姫』に対する熱い思いです。この想いが鹿児島に新しいミュージカルを創っていきます。

2008年6月 ~光の世界~

初顔合わせから約1か月ぶりの5月の練習で、出演者の手元に1枚の「光の世界」という楽譜が配られました。12月のミュージカル『この花咲くや姫』のサブテーマソングです。作曲は、今回のミュージカルの音楽制作と演奏をする作曲家の吉田さとるさん、作詞は、『この花咲くや姫』の物語を生み出した脚本家の大谷美智浩さん。イッツフォーリーズの坂口阿紀さんが「キララ キララと」歌うと、みんなじっと聞き入りました。すぐに出演者全員で楽譜をみながら挑戦。初めにしてはとても上手に歌えました。歌詞を読んでイメージを膨らませるアドバイスを受けると、優しい旋律にのせたきれいな歌詞が生き生きとしてきました。それぞれが気持ちを込めて情景を思い描いて歌った「光の世界」は、キラキラとした子どもたちの声によって命を吹き込まれました。

キララ キララと 波がきらめく  キララ キララと 風がかがやく
キララ キララと 胸がときめく  キララ キララと 光をあびて

2008年7月 ~桜色の台本~

6月の練習初日、まちにまった台本が出演者全員に配られました。出演者の子どもたちは台本を受け取ると、練習室の床に座ったり、寝そべったり、思い思いの格好で読み始めました。いつも元気な声でいっぱいの練習室が台本を夢中になって読む姿であふれていました。70ページ以上ある厚い台本を手に、「全部覚えられるかなぁ…」という声も。物語には、日本神話や古事記でおなじみの登場人物や、アブラ島、ドリーム島、シゴト島、桜の精など子どもたちの創造をかき立てる名前もたくさん。「アブラカタブラ…アブラ島ってなんだろう…」と歌の歌詞を読み、台本には載ってない音楽への新たな楽しみも生まれた様子でした。

初めて読んだ「この花咲くや姫」の物語は、出演する子ども達の心にどのように写ったのでしょうか。この桜色の台本に夢と希望をたくさん詰めて、12月27日の大舞台で大きな大きな花を咲かせてくれることを楽しみにしています。

2008年8月 ~この花の島々~


一生懸命に発声練習をする出演者たち

「この花咲くや姫」は、鹿児島の子ども達のために創られたオリジナルのミュージカル。主人公サクヤが父神オオヤマツミの役に立とうと薩摩の島々を旅するのですが、その3つの島々がとても個性的。テーマソングが完成し、それぞれの色が見えてきましたので、紹介します!
①島の宝物『油』を守り、油中心の生活をしている『アブラ島』の人々は、他の島の人々には油を渡さない、大金持ちです。「油 油 油で天国! 油 油 油は最高!」とアラビアンな歌とダンスで盛り上げます。
②一分一秒も無駄にせず、計画通りに働く『シゴト島』の人々は、余計なことを一切せず、人の話を聞かず仕事をします。「怠け者や ノロマな奴は シゴト島に必要なし!」と大人には耳が痛いような歌とかっこいいダンスで魅せてくれます。
③宝くじが当たることばかりを願い、夢だけを見てバラ色の人生を送っている『ドリーム島』の人々は、働くことはせずに夢をつないで、ただただ待っているだけ。「夢見て暮らすこの島はドリーム島だよ パラダイス」とハワイアンな雰囲気が漂う旋律の曲を素敵に歌い上げてくれます。

出演者の子どもたちは、どの島の曲も大好きで、口ずさんでいます。早くみなさんにお届けする日がくるとよいのですが…。次回は薩摩と天界の神々、桜の精を紹介します。

2008年9月 ~神々と桜の精~


桜の花を表現している桜の精たち
この物語には日本神話をモチーフとした神様がたくさんでます。天上界の神々はアマテラスやニニギなど。薩摩の国の恐れ島が黒い煙を噴き上げ、光を閉ざしているのを見て、光あふれる国にしようと、天上界の神々は薩摩に向かいます。その薩摩を守る神々はオオヤマツミやコノハナサクヤヒメなど。天上界の使者の申し出を拒む薩摩の神々は勇ましい歌で強さを魅せます。また、物語の中には妖精も登場します。小学1~3年生の女子で構成されている桜の精です。桜の花びらが舞っている様子を、ダンスと歌で可憐に表します。

2008年10月 ~インタビュー~


記者発表の様子を見守る土屋さん(奥)

「この花咲くや姫」制作アドバイザーの土屋友紀子さん(東京)にインタビューをしました。

鹿児島の子どもたちの印象は?

明るく、前向きな子どもたちが多いですね。悩んだり、落ち込んだりすることもありますが、その問題に取り組む姿勢がとても純粋です。

苦労したことは?嬉しかったことは?

苦労…あえて言えば、距離ですね。簡単に行き来できないからこそ、鹿児島にいる時間を大切に考えています。
嬉しいことは、たくさんあります。でも、一番嬉しい瞬間は、同じ空気を一緒に吸って、それぞれが化学反応を起こし、一体となった時です。

100人の出演者に対する思いをどうぞ。

努力と情熱をかけて集まっているひとりひとりとの出会いが、それぞれにとって人生においてプラスになる時間として共有したいです。

2008年11月 ~サポート~

オリジナルミュージカル作りに、出演者の子どもたちのがんばりと同じくらい重要な役割をしているのが、現地指導スタッフや保護者のサポートです。

現地指導として、かごしま子ども芸術センターのスタッフやボランティアで構成されている通称SAM(サム)は、子どもたちに一番近い距離で、楽しく、真剣に、そして時に厳しく、一体になりながら舞台作りをしています。鹿児島のスタッフのみで実施する固め稽古では、子どもたちが「役」になるためのワークショップや話し合いなどをとおして、可能性を引っ張り出す手助けをしています。

また、出演者の保護者の方々がサポータースタッフとして、稽古で活躍しています。欠席した出演者の代わりに立ち位置に立ったり、セリフ出しをしたりと出演者と同じように台本を持ち演技をする代役転換係。東京にいる指導者へ稽古の様子を伝えるビデオ撮影をしたり、記録写真を出演者に密着して撮影する記録係。ミュージカルには欠かせない音楽を、セリフに合わせて音出しをする音響係。出演者100名の舞台衣装の布を裁断や、各保護者へ衣装作りのアドバイス、縫製などをする衣装係。舞台演出に欠くことのできない、小道具を集めたり、製作などをする小道具係。子どもたちの稽古に混ざりながら、活動していただいています。

一番のサポートとなるのが、子どもたちが元気に稽古に来られるように、病気やケガなどに気配りをしたり、練習のための送り迎えをしたり、おいしいお弁当を作ってくれる保護者の方々の日々の愛情です。

2008年12月 ~大きくなる~

4月のオリエンテーションから約9ヵ月の「この花咲くや姫」の稽古期間で、小学1年生から中学2年生までの出演者100名は心も体も大きく成長しました。

稽古開始当初の5月、学校が終わった後の夜の稽古では、低学年の子どもたちは眠気との戦いで、集中して話しを聞くうちに、いつのまにかウトウトしてしまうこともありました。今は、低学年の集中力は全員の見本になりました。衣装作りのために、8月に身長測定をしましたが、いざ衣装製作開始の11月には、5センチ近く身長が伸び、大きめに断裁した布も足りなくなる子どももいました。11月に完成した今回のミュージカルのテーマソング「桜島」。台本が出来上がった6月に比べると、歌と振付を覚えるのが早くなりました。みんなの一番大好きなナンバーになり、気がつくと右も左も口ずさんでいる人たちばかりです。

子どもたちと共に成長し続けたこの作品には、15曲の生き生きとした音楽とダンスが加わりました。本番には衣装、舞台セット、照明、作曲家による生演奏が加わります。そして、大舞台のたくさんのお客様を前にミュージカル「この花咲くや姫」は満開を迎えます。


  • 真剣にメモをとる低学年の出演者

  • 「桜島」の振付を練習する様子

~未来に~

平成20年12月27日、澄んだ青空のもと、9ヵ月間の稽古を経てかごしま子どもミュージカル「この花咲くや姫」は本番を迎えました。12月のこの時期、直前まで体調を崩す子どもたちもいましたが、本番当日は、小学1年生から中学2年生までの100名の出演者がひとりも欠けることなく元気に顔をそろえることができました。昼夜あわせて約2,500名の観客と一体となった出演者は、笑顔と涙の結晶となった晴れの舞台で、満開の花を咲かせました。

信じあえる 許しあえる 愛しあえる 優しさあふれる
命の鎖が 未来に続く限り 未来に 未来に

フィナーレ『桜島』では桜の花が“島”一面を埋め尽くし、桜吹雪が舞い散る中、100名の出演者は晴れ晴れとした表情で夢と希望に満ちたメッセージを届けました。

一般公募で応募してきた時の出演者100名の動機は様々でした。途中で逃げ出したくなったり、泣いたりしたこどもも少なくはありません。しかし、稽古が進むにつれ、「この花咲くや姫」を通してできた仲間と励まし合いながら絆を深めました。心をひとつに同じ目標に向かう姿は、とても力強く、周囲の人たちを引きつけました。

出演者をはじめ、保護者、指導者、現地スタッフ、舞台スタッフ、そして公演に足をお運びいただいた観客の皆さま、多くの人の手によって実現したかごしま子どもミュージカル「この花咲くや姫」は、満開を迎えることができました。本当にありがとうございました。


  • 生き生きとした表情のドリーム島

  • 生バンドとの舞台リハーサルをするシゴト島

  • 元気いっぱいのアブラ島

  • お客様をお見送りする桜の精

  • 恐れ島をバック躍る薩摩の神々

  • 光あふれる国を喜ぶ人々と神々

  • 桜満開のフィナーレ